独自の品揃えのために

私は25年間婦人服の専門店を経営し、販売の現場に立ってきました。
まだ、婦人服をあつかうようになって間もない頃のことです。
ファッション業界の大先輩から次のようなアドバイスをいだだきました。

「見るものすべてに好きか嫌いをつけなさい」

当時まだ20代だった私は、それがどういうことに役立つのか、本当の意味を分からずにいました。

それから後、店を経営していく中で、他の店との差別化という目標を求めていくと、「好き」と「嫌い」の区別の意味が重く迫ってきました。

なぜなら、店を他店と差別化することは、オリジナリティーを表現することであり、それは自分を表現することだということに気が付いたからです。

例えば、幼い子供におもちゃを与えるときを想像してみてください。
赤ちゃんのころは、何に興味を示すかわからず、ぬいぐるみを与えたり、おもちゃのピアノを与えてみたり、また絵本を読んで聞かせたり、手当たり次第に喜びそうなものを子供の周りに配置することでしょう。
しかし、数年もすると子供の興味の有る無しがはっきり出てきて、小学校も高学年になるころには彼ら、彼女たちは自分らしい子供部屋を持ち始めることでしょう。

これは商売といえども同じ原理で、興味のないものをコレクションすることはできないのです。興味のあるものにかかわり、その細かな違いを独自の視点で区別するからこそ、わかりやすく整理された他のどの店にも似ていない品揃えのお店が出来上がると思うのです。

私の場合、小売りの立場のときは、「好き」と「嫌い」の判断までで間に合っており、その根拠までは思い至りませんでした。
しかし、メーカーになり、商品を企画し、デザインをする立場に立ってみると、これまでよりさらに踏み込んで考えることが多くなりました。

ある取引先のお店にお邪魔して、素敵な商品に出会ったとします。
そのとき、何故魅かれたのかを考え、掘り下げることにしています。

服について「好き」か「嫌い」を判断するときの要素は、5つあります。

  • シルエット・詳細
  • 素材
  • 用途・機能・。アイテム
  • 色・柄
  • 雰囲気・ムード

上の5つの要素のうち何に魅かれたのかをはっきりさせると、そのものの良いところ=「キモ」が見えてきます。「キモ」が見えてくると、次のモノづくりや仕入れのときに「キモ」を活用し、応用した自分基準の品揃えの助けになるのです。

SUMMER COLLECTIONの企画

ゴールデンウィークも残すはあと二日。いかがお過ごしでしょうか?


私は、古い映画なのですが「ROOKIES」を見て過ごしました。
50才を過ぎたオッサンの涙腺はゆるくて、ハンカチとちり紙が手放せませんでした。

話の内容は至ってシンプル。
不良の溜り場となった野球部を、熱血教師の川藤幸一が、
生徒たちの可能性を信じて指導して、甲子園まで導く話。

そんな話の中で一番私の心に留まったのは、川藤先生が再三口にする「夢をもて!」という言葉でした。
自己啓発本などでもよく出る話で、夢は具体的であればあるほど良いといいます。
スケートで金メダルを獲得した羽生弓弦はオリンピックに向かう飛行機の中で、試合をする前からすでに歓喜の涙を流していたそうです。
そこまで具体的であるならもう夢を通り越して「予定」といえますね。

さて、私は5月中旬より韓国出張です。夏物商品を作りに出かけます。
そこで大切なのは「予定」です。
「予定」は具体的に計画しなければなりません。
お買い上げいただいたお客様がどんなシーンで服をお召しになるのか?
どんなアイテムの服なら活躍するのか?どんな色なら?どんな素材なら?
適切にテーマを設定して、提案するアイテムを絞りこみます。

7月、夏のある日、日常の中のちょっとした出来事。
どのようなシーンがあるでしょう?

友人同士ビヤガーデンでおしゃべり。
職場の仲間と暑気払い。
家族で楽しむ旅行。
初夏の気持ちの良い天気に誘われてちょっと足を延ばしてお気に入りのCAFE.

そんな思い出深い、あるいは何気ない場面で、私たちがお届けする服を着ていただけたら素敵だなぁと思うのです。

気になる部位

ご婦人方の着こなしで皆さんのお悩みを要約すると、3つの部位に集約されます。

  • 二の腕
  • お尻

ふつうの対策

  • 腕には7分袖
  • お尻にはチュニック丈トップス
  • 足にはパンツ

すべて、隠す方向ですね

思い切って逆方向で考えると

  • 二の腕にはフレンチスリーブ
  • お尻にはタイトスカート
  • 足にはショートパンツ

結論

この二つの方向性を踏まえてモノづくりを考えます。

上のように一般的な方面からのアプローチと、正反対からのアプローチを並べてみる。この上にボリューム袖やワイドパンツなどトレンドを織り込んでみる。さらにトレンドの正反対も検討してみる。そうして練り上げられたシルエットからどんなシーンで着られるか?どんなライフスタイルを持ったお客様に来てもらえそうかを検討する。

こんな風に私は商品の企画を始めてみる。